屋根裏(隔離生活)通信

ロックダウンの解除間もない、寝ぼけまなこのフランス・パリから。

日記

クリストフ君の災難

「コロナ疲れ」という言葉を知って、ぼくは過去1か月間ここに書いてきた文章の内容を反省してしまった。たしかに昨今はテレビをつけてもインターネットを覗いてもコロナウイルスの話題で持ちきりで、心の休まる隙もない。そのうえでぼくがなおもこの風潮に…

2週間後へのタイムスリップ (下)

その牧歌的な光景を前にすっかり拍子抜けしていると、男が声を掛けてきた。「カモっちゅうのは、豆は食べないもんですかねえ」「いやあどうでしょう、ふだんは水草なんかを食べてるはずですが」答える声が変にうわずってしまったのは、質問の突拍子の無さの…

2週間後へのタイムスリップ (上)

完全隔離生活のさなか、これはどうもカフカの小説『変身』みたいだなと思うことがあった。 ある朝とつぜん巨大な虫の姿で目覚めてしまった青年グレゴールは、家族によって寝室にかくまわれ、壁や天井を這い回るだけの無為な生活を送ることになる。家族ははじ…

花のいのち

せめて記事の一件くらいは、ぼくのラナンキュラスのために捧げるべきではないかと思う。屋根裏部屋の天窓の下でぼくが育てていた小さな鉢植えの花のことだ。

みずからを遠く隔離せよ

呼吸苦は発生から二晩のちには嘘のように消え去ってしまった。

あらたな息吹

あとの祭りと重々知りながら、ぼくは手を洗いに洗面台に立った。

姿の見えないいやな客

散歩に出た日から微熱が続いていた。

半径1km春めぐり (下)

ぼくは正攻法をとることにした。

半径1km春めぐり (上)

朝7時。目覚めは良好。天窓の外は新鮮な日の光に満ちている。

これからの日常

今日もまた、嫌味なくらいに空は晴れ渡っている。

ある老画家の脱出劇 (終)

大統領がマスクもせずに病院を訪ねたという事実が李さんにとっていかに大きな衝撃だったか、ぼくにはいまだに推し量りかねる。

ある老画家の脱出劇 (四)

ぼくだって、李さんのことを始終笑ってばかりいたわけではない。

ある老画家の脱出劇 (三)

バーゼル行きを取りやめたことで、李さんは心の落ち着きを取り戻したようだった。

ある老画家の脱出劇 (二)

フランス語が話せないわりに、李さんは近所の市場で顔が知られている。

ある老画家の脱出劇 (一)

暇にまかせて昼寝をしていたら、携帯電話の着信音で起こされた。

沈黙の春、その陰影

燦燦と注ぐ日の光が悩ましいものになるなんて、パリ市民の誰が予想しただろう。

市民よ家に籠れ (下)

やはり世界はきれいにひっくり返ってしまったらしい。

市民よ家に籠れ (中)

考えてみればこれはいくぶん奇妙な書類だ。

市民よ家に籠れ (上)

「我々は、戦争中、なのです」

ウイルスと花 (下)

店頭にはオレンジ色のラナンキュラスの小さな鉢が並べられていて、

ウイルスと花 (上)

「もうすぐ閉店しますから、お引き取りの準備を!」